HOME中国語中国を知る
 
 



江口洋子の華流エンタメ応援団:スペースアルク
 

各メディアにて、中華圏エンタメ担当記者としてン十年のキャリアを持つプロデューサーえぐっちゃんこと江口洋子さんが、遂にスペースアルクにも参戦! 日々開催されている中華圏エンタメイベントでの裏情報や、中国語学習にも本格的に力を入れはじめたえぐっちゃんの奮闘ぶりを、紹介いたします!

2012年5月14日

TITLE:台湾に嫁いだ外国人女性たち、映画「《内人外人》新移民系列」

0514poster.jpgいま台湾で、とても興味深い「《內人外人》新移民系列」という映画4作が公開中です。
これは、台湾に嫁いできた外国人女性を描いたもので、最近プロデューサーとしての仕事が多い李崗(リー・ガン)の手によるプロジェクトです。
4月27日から5月13日まで開催されていた新北市藝術電影節という映画祭で上映されていたのですが、5月11日から侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督がプロデュースする「台北之家」にある映画館で公開となっています。会期中の土日には監督や俳優によるQ&Aもあるので、この回をねらって2日間で「野蓮香」「金孫」「黛比的幸福生活」「吉林的月光」を見てきました。

0514theater.jpg政府の発表によると、去年台湾で結婚したカップルの10組中1.3組が国際結婚だそうです。その中の8割が台湾人男性と外国人女性ということで、その数は45万人を突破、台湾総人口の2パーセントを占めています。
原住民よりも多くなったこの"新移民"の多くは、農村に嫁として、そして働き手として迎えられているのは、少子化がもたらす現象のひとつ......。日本でも山形県に事例があります。
6年前にこの現象から構想開始、今回のプロジェクトを立ち上げた李崗は、4つの脚本を書き、鄭有傑(チェン・ヨージエ)、周旭薇(チョウ・シューウェイ)、傅天余(フー・ティエンユー)、陳慧翎(チェン・フイリン)と共にベトナム、大陸の東北部、インドネシアから嫁いできた女性と、その家族や周囲の人々との物語を作りました。

0514hailun.jpg新北市藝術電影節のオープニング作品でもあった「野蓮香」は、これまで若い世代(10代)を主人公にした作品を撮ってきた鄭有傑監督が、台湾の高雄の農家に嫁いできたベトナム人女性とその家族を描いた映画です。
決して楽ではない農作業と家事、育児に明け暮れる主人公は、夫と姑から二人目の孫を望まれますが、精神的にも身体的にもそんな余裕はありません。そんな気持を理解されず一人悩んでいる時、土地の権利書がなくなり姑に疑われることに......。
それぞれの様々な"思い"を丁寧に描いた、心あたたまる作品です。こんなに肩の力が抜けた作品は初めてではないかと思わせる鄭有傑ですが、なんと初のハッピーエンディング。
主演はベトナムと台湾のハーフ海倫清桃、陳竹昇(チェン・チューシェン)。

0514chen.jpg陳慧翎監督の「吉林的月光」は、大陸の吉林省から来た女性が主人公。母親の治療代のためにエージェントを介して台湾のやくざに嫁いだ女性が、夫が大罪で地下に潜ったため、一人マッサージ店で働くことに。ある日成功した友人が訪ねて来るため、あわてて何不自由ない暮らしの妻を装うのですが......。
監督の陳慧翎は、ドラマ「秋のコンチェルト」「王子様の条件~Queen Loves Diamonds~」などの売れっ子。
主演は尹馨、かつて「女F4」というセクシーユニットの一人で、李康生(リー・カンション)の映画「幫幫我愛神藍光 HELP ME EROS」で話題になりましたが、芯の強い大陸女性を好演しています。

0514jiman.jpg「黛比的幸福生活」は、失業中で自堕落になった夫を支える気丈なインドネシア女性の物語です。
コーヒー豆農園で働く主人公は、仕事の傍らコンクールでの優勝を目的に日々オリジナルブレンドを研究中。ある日、かつての恋人がインドネシアから訪ねて来て動揺します。実は、一人息子の父親は彼の子であり、台湾人の夫にも秘密にしていたのでした......。
監督の傅天余は、2009年に「帶我去遠方」でデビュー、この時にインタビューしたことがあるのですが、待望の2作目です。前作同様、静止画のような美しい引きの映像が効果的に使われ、ハートフルな作品に仕上がっています。
アイドルグループから女優に転身した主演の周幼婷(チョウ・ヨウティン)が、自分の"幸せ"と"未来"をしっかり見つめる良い演技をしています。

0514liu.jpg周旭薇監督の「金孫」は、来月開幕する台北電影節の長編部門に入選しました。4作の中で唯一コメディタッチの味わい深い作品です。
純朴な農村に外国からの観光誘致のためホテル建設を推進する投資話が持ち込まれ、村あげて浮かれる中、そんなことは気にもかけない肝っ玉母さんが、ベトナムから息子の嫁を迎えます。当の息子は、実は年上の占い師と密かに交際していたのですが......。
主演は劉品言(エスター・リウ)、かつてJ★StarのSweetyの一員で歌にドラマに活躍、最近は「雞排英雄」「陣頭」という大ヒット映画への出演が続いています。
朴訥とした農村青年を演じる張書豪(チャン・シューハオ)が、いい味を出していて、期待の若手俳優の中でも演技力が頭一つリードという感じ。

ということで、ざっとご紹介した4作、テーマである"新移民"を様々な切り口で描いてどれもレベルの高い作品です。ひとり外国から嫁に来るというだけに、みんなしっかりした魅力的な女性で、相手の旦那がどれもちょっと情けなかったりするものの、人の心のあたたかかさが伝わってきます。
これら4作は5月25日まで上映していますので、この時期に台北に来る方はぜひご覧になってください。
そして、日本でもどこかの映画祭で上映されると良いなぁ、と。映画関係者の皆さま、よろしくお願いします。

2012年5月 7日

TITLE:「賽德克、巴萊(セデックバレ)」Blu-ray/DVD発売サイン会イベント

0507seediq-1.jpg台湾映画の歴史大作「賽德克、巴萊(セデックバレ)」は、3月に大阪アジアン映画祭でも上映され、現在アメリカで公開中ですが、先頃台湾でDVDとBlu-rayが発売されました。これを記念して、5月5日に魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督、メインキャストの林慶台(リン・チンタイ),大慶(ダーチン),馬志翔(マー・ジーシャン)によるサイン会イベントが行われました。
この日のサインは先着150名のみということで、私も整理券発行の時間に会場である台北駅地下街の藝文西廣場へ行きました。

0507seediq-2.jpgイベント開始の90分前なので、椅子は並べられていたもののまだステージは設営中。整理券をもらい「メディアの受付はどこですか?」と聞くと一瞬「はぁ?」みたいな顔をされましたが、丁寧に案内してくれました。取材に来て、一般客と同じようにサインをもらうなんて人は、台湾メディアにはいないようで......。
この時すでに一般客用の椅子は満席、開始時間になるとその周りを囲む黒山の人だかり。中には賽德克族の衣装を着て参加している人も数人いました。

0507seediq-3.jpgそんな中、魏徳聖監督、メインキャストの林慶台、大慶、馬志翔が登壇すると拍手と大歓声。いやぁ、かっこいいです。監督も髪を短くして若々しかったのですが、去年3月の香港電影節に始まる宣伝活動はすでに一年を超え、14カ月にも及んでいるため「まるでマラソンのようだよ。海外宣伝が終わったら、家でゆっくり休みたい」と笑いながらも真情を吐露していました。

挨拶の後、Blu-rayとDVDに収録されているメイキングの中から、素人俳優たちの訓練風景が映し出されました。監督は彼らに"狩人の眼"を要求、それぞれの本性を見極め、ふさわしい役柄に配したということでした。
この厳しい訓練は3カ月続き、プロの俳優である馬志翔は、「彼らは気負わないし、怖がらない。その表現力には驚かされた」と言っていました。

0507seediq-4.jpgまた、母親達と少年達の別れのシーンでは、気温が10度という雨の中の撮影、みんなカットがかかるとバスタオルで身体を覆っていましたが、これが3日間続き、重症の風邪にかかる人が続出だったそうです。
中年のモナルダを演じた林慶台は、「訓練開始後すぐに病気で入院することになり、退院後は体力もなかったため訓練に戻れないと思った。監督から励まされ、一度家に帰って"神の御心"を信じた。この映画で演じたことは、貴重な体験だった」と、その頑健な外見からは想像できないエピソードを語ってくれました。(ちなみに、林慶台は本業が牧師さんです。)

0507seediq-5.jpg一方、モナルダの青年時代を演じた大慶は、この映画を機にプロの俳優として活動していくことになりましたが、客席から黄色い歓声が飛ぶアイドルばりの人気。次回作は詐欺グループの兄貴と弟分の義理人情を描いたコメディで、6月にクランクインすることを明らかにしました。「それ以上はまだ話せないけど、学ばなければいけないことがたくさんある」ということでした。

0507seediq-6.jpg馬志翔は高校野球を描く監督作「KANO」の制作がすでに発表されていますが、チームは2人の漢民族、3人のアミ族、プュマ族が1人、日本人3人で編成され、この中の3人がメインキャストになるそうです。いま、素人俳優のオーディション中で、9月にクランクイン予定、美術には「賽德克、巴萊(セデックバレ)」の種田陽平に再度オファーしたいと言っていました。

サイン会の限定150人というのは、大陸の宣伝期間中に一次帰国した監督の飛行機の時間の都合ということで、これが終わるとまたとんぼ返りしたようです。